東京地裁判決
東京都渋谷区の外資系金融会社社員、三橋祐輔さん=当時(30)=の切断遺体が見つかった事件で、殺人と死体損壊・遺棄の罪に問われた妻の歌織被告(33)に対し、東京地裁(河本雅也裁判長)は28日、懲役15年(求刑・懲役20年)の判決を言い渡した。
公判では歌織被告の責任能力が最大の争点となった。
検察側は「責任能力に問題はない」として懲役20年を求刑したのに対し、弁護側は心神喪失を理由にあくまで無罪を主張。鑑定医が「犯行時は心神喪失」と精神鑑定していた。
裁判を通じて最も注目されたのは検察側・弁護側双方が請求した精神鑑定の結果だ。
3月の第9回公判では、弁護側の鑑定医だけではなく、検察側の鑑定医も犯行前後に幻視・幻聴体験があったことなどから、歌織被告が「短期精神病性障害」という精神疾患を発症していたと判断。犯行時の責任能力について「心神喪失の状態だった」と報告した。
検察側は再鑑定を請求したが、裁判所は却下していた。
弁護側は犯行当時の歌織被告が突然、短期精神病性障害を発症し、現実感のない夢の中のような状態だったと主張。「妄想によって行われた犯行で、犯行時に責任能力は失われていた」と無罪を訴えた。歌織被告も鑑定結果が法廷で報告された後の被告人質問で、殺害時の状況を「覚えていない」などと供述し、殺害後も祐輔さんの声が聞こえたり、姿がみえたりするなどの幻視・幻聴体験が繰り返しあったことを強調していた。DV続いていたと認定するが…被告には「完全な責任能力」
三橋歌織被告の夫バラバラ殺害事件の判決公判で、歌織被告に懲役15年(求刑・懲役20年)を宣告した東京地裁の河本雅也裁判長は、検察が主張していた「夫によるDV(配偶者間暴力)は事件直前はなくなっていた」との構図を否定、「夫に落ち度がないように装う『囲い込み』が行われるなど、夫によるDVはなくなっていなかったと認められる」と認定した。
そのうえで、河本裁判長は歌織被告に刑事責任能力があったと認定し、殺人・死体遺棄・損壊の罪がいずれも成立すると判断した。
◇
午前10時前、東京地裁104号法廷に姿を見せた歌織被告は白ダウンベストに白の長袖シャツ、白ズボンの全身白一色。河本雅也裁判長に一礼し、いつものように髪を一度かき上げると被告人に座った。
河本裁判長に促されて証言台の前に立った歌織被告は、立ったままで判決を聞いた。張りつめた空気の中、懲役15年を言い渡す河本裁判長の声が法廷に響いた。
実刑判決にも、身動き一つしない歌織被告。判決理由の言い渡し中も、時折髪をかき上げるだけで、うつむきがちに聞き入るだけだった。
公判を通じて、歌織被告は、祐輔さんの有形無形の暴力を時には涙を交え、時には怒りに声を震わせながら供述。その一方、毎回九州から上京しては、傍聴席の最前列で祐輔さんの遺影とともに公判を見続けた遺族への謝罪の言葉はなく、この日も目を合わせることもなかった。
「自分がしたことについてじっくり考え直してください。自分を見つめ直す機会を得て、立ち直ってくれると信じています」
河本裁判長からそう説諭されると、歌織被告は深くうなずき、閉廷後、刑務官に付き添われ静かに退廷した。
(2008.4.28 産経ニュースより)
※ 弁護側によると、三橋歌織被告は「自分のやったことは分かるので、控訴はしたくない」と話しているという。
弁護側は「三橋被告本人を説得して控訴したい」としている。
三橋歌織被告の弁護人が控訴。
※ 東京地検・渡辺恵一次席検事の話
完全責任能力を認めて有罪としたもので妥当な判決と受け止めている。量刑が求刑に比べて軽くなっている点については判決内容を検討して適切に対応したい。
〈 祐輔さんの両親が手記公表 〉
懲役15年という刑については、親としては不満ですし、納得しかねます。責任能力を認めたという点は評価したいと思います。
しかし、夫婦間暴力については、結局は祐輔が自分自身で反論もできないし、祐輔自身の言葉で事実を語ることができないという限界がありますから、本当に悔しさを感じます。
控訴につきましては、検察官が今後協議して決めていくことですので、その推移を見守るしかありませんが、親としては控訴して欲しいというのが正直な気持ちです。
(2008年4月28日)
【関連詳細記事】
三橋歌織「新宿・渋谷夫切断殺人事件」(経緯)
【続報】
三橋歌織被告、控訴審初公判
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三橋歌織被告、控訴審再精神鑑定
●
「新宿・渋谷夫切断殺人事件」控訴審結審
●
三橋歌織被告、二審も懲役15年
〈 歌織被告公判全記録一覧 〉
産経ニュース
初公判(平成19年12月20日)
http://sankei.jp.msn.com/affairs/trial/071220/trl0712201644029-n1.htm
第2回公判(12月25日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080123/etc0801231805001-n1.htm
第3回公判(平成20年1月17日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080123/etc0801231847002-n1.htm
第4回公判(1月22日)
http://sankei.jp.msn.com//etc/080123/etc0801231948003-n1.htm
第5回公判(1月30日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080206/etc0802061421000-n1.htm
第6回公判(2月7日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080212/etc0802121152000-n1.htm
第7回公判(2月12日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080212/etc0802121333002-n1.htm
第8回公判(2月25日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080225/etc0802251445000-n1.htm
第9回公判(3月10日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080312/etc0803121101000-n1.htm
第10回公判(3月12日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080312/etc0803121411001-n1.htm
第11回公判(3月24日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080327/etc0803271638000-n1.htm
第12回公判(3月27日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080410/etc0804101614001-n1.htm
第13回論告求刑公判(4月10日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080417/etc0804171916000-n1.htm
第14回判決公判(4月10日)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080623/etc0806231242000-n1.htm
【 主文 】
歌織被告を懲役15年に処する。
未決拘置日数中280日をその刑に算入する。
【 犯行の背景と犯罪事実 】
1 歌織被告は平成15年3月、三橋祐輔さんと結婚。直後から、祐輔さんから種々の暴行や精神的束縛(ドメスティック・バイオレンス=DV)を受けていた。平成17年6月には鼻骨骨折などの重傷を負う暴行を受け、約1カ月間、シェルターに入所した。
祐輔さんが暴力を振るわないなどと約束したことから、歌織被告は再び、祐輔さんと暮らすようになった。しかし、その後もDVは続き、夫婦間のいさかいも絶えなかった。歌織被告は祐輔さんに対する怒りと憎しみを募らせていった。
歌織被告は祐輔さんとの生活から逃れられないと思い込みながらも、離婚に向けて仕事や住居を探し始めていた。
歌織被告は、祐輔さんと交際中の女性との会話を秘密裏に録音することに成功、平成18年12月11日、祐輔さんと離婚などについて話し合うことにして祐輔さんの帰りを待った。
祐輔さんは、翌12日午前4時ごろになって帰宅。録音の件をほのめかされたのに、離婚などの話し合いに応じることなく眠りに就いた。
2 歌織被告は、これまでの夫婦間の葛藤(かっとう)や、自分の人生にまつわる辛い体験に思いをめぐらすうちに、今後も祐輔さんとの生活が継続することに絶望的な気持ちになった。「祐輔さんから逃れたい、この生活を終わらせたい」などと考え、とっさに祐輔さんに殺意を抱いた。
同日、渋谷区の自宅マンションで、就寝中の祐輔さんに対し、殺意をもって、肩に持ち上げていたワインの瓶を頭部に振り下ろした。起き上がった祐輔さんに対し、恐怖を感じつつも、さらに殺意をもってその頭部を瓶で数回殴打し、脳挫傷で死亡させた。
3 歌織被告は、同14日ごろ、自宅マンションで祐輔さんの遺体の首、腹部、左ひじ付近、右手首付近をのこぎりで切断。同日、頭部、左腕および右手を切り離した遺体の上半身を、新宿区内のビルの植え込みまで運搬し、放置した。
同16日ごろには、遺体の下半身を渋谷区内の民家まで運搬して放置。さらに頭部を町田市の公園内の雑木林まで運び、土の中に埋めた。
歌織被告はこのようにして、祐輔さんの遺体を損壊し、遺棄した。
【 犯行の背景に関する補足説明 】
検察官は、歌織被告がシェルターを出所した後は祐輔さんによるDVはなくなったと主張する。
犯行前の状況に関する証人らの供述や歌織被告の手帳などの記載、祐輔さんの携帯電話の通話履歴、その他の関係各証拠からすれば、歌織被告の供述するとおり、祐輔さんからの暴行は、両手を挙げて身体からぶつかるといった具合に、手拳や平手による直接的な殴打とはとられないかたちで、出所後も継続していた。
また、歌織被告の周囲に、歌織被告のことをことさら悪く言い、自分に落ち度がないように装ういわゆる「囲い込み」が行われるなど、祐輔さんによるDVはなくなっていなかったと認められる。
【 責任能力の判断 】
1 弁護人は、歌織被告が「短期精神病性障害」、または何らかの脳の器質的障害に基づく意識障害や幻覚の症状によって、心神喪失の状態に陥っていたため、無罪であると主張する。
2 責任能力の判断とは、個々の事案ごとに、鑑定の結果だけでなく、関係する証拠から認められる歌織被告の犯行当時の精神状態、態様、動機、前後の行動などの諸事情を総合的に検討し、刑事責任を負わせるべきかという観点から裁判所が行う法的判断である。
一方、精神科医による鑑定結果は、精神に障害があるかないか、障害がある場合、それが犯行時の歌織被告の意思や判断に与えた影響がどうだったかという観点から、障害の程度やその双方についての専門的知見に基づく参考意見である。
裁判所は、精神の障害の有無や程度の認定において、鑑定に合理性がある限り、十分に尊重する。しかし、鑑定結果が事理弁識能力や行動制御能力に言及している場合でも、それは精神医学の専門家としての分析結果にすぎないのであり、責任能力については、総合的に検討した法的判断によって最終的に決定する。責任能力の判断は鑑定結果に拘束されない。
以上の考えを前提として、裁判所は歌織被告の精神鑑定を実施するにあたり、責任能力そのものは鑑定事項でないと明言した上、歌織被告に犯行時、どんな精神障害があったか、それがあるならば、犯行時の意思、判断にどんな影響を及ぼしたかを鑑定事項とし、検察官と弁護人それぞれが推薦する医師双方を鑑定人として採用し、それぞれ独立の立場で鑑定を行うよう命じた。
両鑑定人とも鑑定の趣旨を理解して、鑑定を行った。一部鑑定の基礎データを共有したり、歌織被告の面接を2人が同席して行ったこともあるが、鑑定意見は全く別々に考えられている。鑑定手法において何ら不相当なところはない。
3 責任能力の検討
(1)歌織被告の精神の障害の鑑定結果
ア 鑑定結果
犯行直前、歌織被告は、短期精神病性障害を発症した。
殺人時、急激に強い不安などの情動反応が起こった上、一定の意識障害をともなう朦朧(もうろう)状態に幻視、幻聴などが伴い、夢幻を見るような状態に陥った。次々と切り替わる幻視の一部として祐輔さんを見ていた可能性があった。現実感を喪失させ、強い情動反応などのため、適切に状況を判断して行動を制御することが難しい状態にあった。
死体損壊、死体遣棄をしたとき、歌織被告には、祐輔さんと対話するなどの幻視、幻聴などがあり、多幸感があるなどの症状があった上、一定の意識障害があった。さらに重大な犯罪を行ってしまったという衝撃もあり、行動の抑制が困難になっていた可能性がある。
イ 鑑定結果の信用性
検察官は、歌織被告はそれまで誰にも、幻覚があったなどと供述していなかったのに、鑑定医らの問診時に供述するに至ったのは、鑑定医らが誘導的に質問したからで、鑑定結果は信用できないと主張する。しかし−。
a 幻覚体験は、統合失調症による型と、それ以外の型とに区別することができる。歌織被告が供述する幻覚体験は、すべて後者に符合し、前者に属するものはない。このように矛盾のない幻覚体験を虚偽に語るためには、高度に専門的な知識が必要である。
b 歌織被告の幻覚体験の供述を鑑定医が要約したかもしれないが、歌織被告が供述していないことを作ったり、供述したことをあえて取り上げなかった形跡は見当たらない。
c 歌織被告が供述した幻覚の内容は、祖母や祐輔さんに関連する具体的なものであり、鑑定医の誘導により供述したものとは考えにくい。
d 当初、捜査官に対し幻覚体験らしき話をしようとしたが全く取り上げてもらえず、その後は自分がおかしいと思われるのが嫌だったので、弁護人や裁判所に対しても話せなかったからであるとする歌織被告の供述は、歌織被告に対する取り調べ状況からすれば、信用できる。
以上から、犯行当時、歌織被告には先に述べた幻覚症状が生じていたと認められ、その他犯行当時の歌織被告の精神の障害に関する鑑定結果の信用性に疑いを差し挟む事情はない。
(2)責任能力の判断に必要な鑑定結果以外の諸事情
ア 殺害行為前の行動、動機
歌織被告は、殺害行為の直前、友人と応対したが、そこに特に異常さは認められない。その後、短期精神病性障害を発症して先述のような精神の障害を有することになる。先に認定した犯行動機の内容は、歌織被告の当時の状況からすれば自然で、理解できる。
イ 殺害行為の態様とこれに関する歌織被告の記憶
祐輔さんの受傷状況から、歌織被告の攻撃は頭部に集中していたと認められる。歌織被告は、犯行時、一定の運動能力と意識の清明さを保っていたと認められる。一見粗雑な犯行であるが、異常なものとまでは認められない。
歌織被告は、祐輔さんを殴打する際の自らの行動、その前後の心情、祐輔さんの姿勢や殴打された際の反応などを記憶している。
ウ 死体損壊、死体遺棄について
のこぎりなど必要な用具を購入して準備を整え、のこぎりを使用して死体損壊行為に及んだ。その後、上半身はごみ袋に入れた状態で道路の脇の植え込みに捨て、下半身は一見空き家にみえる民家の敷地内に捨てた。身元が判明しやすい頭部は自宅から比較的離れた公園の土の中に埋めた。指紋により個人の特定がされる右手および左腕は、管理人がごみを確認して仕分けする自宅マンションのごみ捨て場とは別のごみ捨て場で家庭ごみと一緒に捨てている。自己の犯行の発覚を防ぐための合理的な行動をしている。
歌織被告は、死体が怖くて目の前から消したかったから損壊・遺棄したと供述する。そうした心情は否定しないが、犯行隠蔽(いんぺい)の目的もあったと認められる。
エ 犯行後の行動
歌織被告は、祐輔さんの捜索願を出し、死体損壊に使用したのこぎりなどを実家に送り、一時祐輔さんの死体を入れていたクローゼットを業者に依頼して処分し、床、クロスの張り替え工事を業者に依頼し、さらには祐輔さんの安否を気遣う祐輔さんの父親に対し、祐輔さんになりすまし「迷惑かけてすみません。もう少しだけ時問を下さい。祐輔」という内容のメールを送って祐輔さんが生きていることを装うなどしている。これらは明らかな犯行隠蔽行為であり、歌織被告は、その目的達成のため、複数の者と目的を持って交渉している。
(3)責任能力の判断
殺人行為時、歌織被告は、短期精神病性障害を発症し、急激に一定の意識障害を伴い、夢幻を見るような状態に陥った。幻聴や幻視などが生じ、相当強い情動もあった。しかし−。
ア 幻聴や幻視などの内容は、歌織被告の祖母や祐輔さんの読んでいた雑誌などに関係するものや当時の自己の状態が反映したもので、歌織被告の人格からの乖離(かいり)はない。また、例えば祐輔さん殺害を指示・示唆するような犯行を誘引するものではなく、犯行動機の形成に全く関係がない。
イ 歌織被告は犯行の一部や当時の心情についての記憶を有し、犯行動機も当時の歌織被告の状況からすれば了解可能で、動機を踏まえれば犯行態様にも異常さはない。いずれも歌織被告の人格と乖離していないし、犯行後には目的を持って犯行隠蔽行為を行っている。
以上からすれば、殺害行為は、歌織被告が、その意思や判断に基づいて行ったものと認められる。殺人行為当時の歌織被告の精神の障害は、現実感の喪失や強い情動反応により犯行の実現に影響を与えていたものの、責任能力に問題を生じさせる程度のものではなかったと認められる。
鑑定医は、歌織被告の行動制御能力がなかったのではないかと述べている。しかし、相手を刺し殺す殺人の場合にも、それが悪いと知りつつ刺してしまうのであり、これも行動が制御できていないともいえる。その場合とどう相違するのかと問われて、鑑定医は「あらゆる重大犯罪は、犯罪時点で何らかの精神の変調がある」「情動という現象に関しては、実際非常に難しい」とも述べていることなどから、鑑定医の供述は、歌織被告が殺害行為時に完全責任能力があったことについて合理的疑いを生ぜしめない。
【 量刑の理由 】
殺人に至るまでの経緯で、歌織被告に同情の余地が相当ある。
歌織被告は、婚姻直後から夫である祐輔さんから暴行などを受け続け、顔の容貌(ようぼう)が変わるほどの鼻骨骨折などの傷害を負い、PTSD(心的外傷後ストレス障害)を発症した。しかし、祐輔さんはDVを継続、歌織被告からの離婚の求めに応じず、歌織被告を精神的に追い込み、歌織被告は「祐輔さんとの生活から逃れられない」と思い込むに至っている。まさに歌織被告自身がいうように、地獄のような夫婦生活を送っていた。このような生活が、離婚の話し合いに応じようとしない祐輔さんの態度をみて、絶望的な気持ちにさせ、歌織被告がとっさに殺意を抱いたことに影響していることは否定できない。
歌織被告は犯行時、短期精神病性障害を発症。この精神の障害は責任能力に問題を生じさせる程度のものではないが、犯行の遂行に何らかの影響を与えている。
しかし、こうした経緯は、祐輔さんを殺害し、その死体を損壊し遺棄したことを正当化しない。
歌織被告は、寝ていた無防備な祐輔さんの頭部をいきなりワインの瓶で殴打した。祐輔さんが起き上がり話しかけてきても、倒れても、なお、その頭部を執拗(しつよう)に殴打し続け、祐輔さんの死亡という非常に重大な結果を生じさせている。祐輔さんは会社での昇進を間近に控えるなど仕事も順調に進み出した矢先、30歳の若さで突如、生命を奪われたのであり、その無念さは察するに余りある。
さらに、歌織被告は祐輔さんの遺体を5つに切断した上、それぞれ遣棄した。祐輔さんの遺体、特に頭部の損傷は激しく、あまりにも残酷、無残な犯行である。
歌織被告は数々の犯行隠蔽(いんぺい)行為を繰り返した。なかでも、行方不明の祐輔さんの安否を必死に心配していた祐輔さんの両親に対し、祐輔さんになりすまして同人が生きていることを装ったメールを送信した行為は、一人息子の安否を気遣う親の気持ちを踏みにじる、あまりに卑劣かつ自己中心的な行為である。
いかなる経緯があったとはいえ、このような形で成長を楽しみにしていた一人息子を殺され、その死体を遺棄・損壊され、直接に卑劣な隠蔽行為を行われた遺族の受けた衝撃、怒り、悲しみは筆舌に尽くしがたく、歌織被告に厳罰を求めているのも当然である。
以上からすると、歌織被告の犯情は悪く、その刑事責任は重大である。
そうすると、歌織被告のために酌むことができる事情を最大限に考慮しても、歌織被告には主文の刑をもってのぞむのが相当と考え、主文のとおり量刑した。
(了)
http://sankei.jp.msn.com/etc/080623/etc0806231242000-n1.htm
